修験道の開祖・役の小角は、舒明6年(635年)、葛木山ふもとの茅原に生まれ、年少の頃から雨の日に屋外を歩いていても着物を濡らさず虫を踏まないなど、超人的な能力が見られたと言います。長じて金剛山に登り微妙の声を聞き、法起菩薩浄土に至り、お堂を建立して法起菩薩を安置、そこに庵を結んで住み、自ら悟りを開きました。
その後も全国の深山幽谷や霊山を訪ねて修行を重ねるうち、斉明4年(658年)、後山山頂に奇雲が垂れ込めているのを見た役の小角は、「仏菩薩の遺跡なり」として後山に登り、昼なお暗い幽谷の奥地に分け入りました。すると役の小角の前に仏が現れ、「末世の人々の救済を望むのであればこの山を開いて蔵王権現を安置すべし」というお告げを残し、何処かへ消え去りました。役の小角はお告げに従ってお堂を建立し、7年余り籠もって修行した、と「後山霊験記」に記されています。